1 房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020について
(1)いちはらアート×ミックス2020の目指すものについて
①来年、令和2年3月20日から5月17日までの59日間で
開催予定の「いちはらアート×ミックス」は今回で3回目の開催となり、第1回目は約8万7千人・第2回目は 約10万人が訪れた3年に一度の周期で行われている芸術祭で、「晴れたら市原、行こう」をキャッチコピーに市原市の歴史・文化・自然・人の暮らし・食・スポーツなどの魅力と現代アートとを融合させ、まち・ひと・しごと創生総合戦略に掲げる「世界に一番近いSATOYAMA」プロジェクトに謳われている様に、周辺の地域資源の相互利活用や交流人口の拡大等によって地域経済の循環を創出させる広域的な仕事づくりや羽田・成田の両空港の中間的な立地を生かした広域観光産業づくり等を視野に入れた本市中南部地域の活性化、さらには多彩な魅力を世界に発信するシティプロモーション戦略などを通した定住人口の増加策など、官民連携の地域活性化へ向けた取り組みの一つであると理解していますが、アート×ミックス事業を市原市が行う事の意義を改めてお伺いします。
小出市長 私は、第3回のアート×ミックスを、本市の歴史、文化、自然、人の暮らしなど、地域の持つ様々な資源を現代アートと融合させ、より魅力的な「いちはら」を再発見する新しい形の芸術祭と位置付けました。
特に、開催時期にあたる2020年は、東京オリンピック・パラリンピックの開催年であることから、大会の文化プログラムに位置づけた上で、日本文化の魅力を発信し、多様性に富んだ芸術祭とすること、さらには、2020年以降を見据えたレガシーの創出に資することをめざしております。
アート×ミックスは、アーティストと地域住民の協働により、市原市独自の歴史や自然などの豊かな資源を活用し、新たな魅力を作品として作りあげ、市民の地域への愛着と誇りを創生するものであり、まさに総合計画の理念として掲げた「ひとの活躍が新たな誇りをつくるまち」に通じるものであります。
また、この事業は、回を重ねてきたことにより、千葉市をはじめとした周辺自治体からも高い評価をいただいており、今回は「房総里山芸術祭」の名を冠することで、市域を超え、広域的な協力体制を構築し、更なる交流人口の拡大をめざしてまいります。
私は、実行委員会の会長として、「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020」を、市原市の活性化のみならず、周辺地域全体の発展につながる、より進化した芸術祭となるよう、強い覚悟を持って取り組んでまいります。
②6年前の2014年に開催した第一回アート×ミッスクで大地の芸術祭や瀬戸内国際芸術祭を手掛けてきた北川フラム氏を総合ディレクターに迎え、本市南部地域の人口減少・少子高齢化をアートの力で解決させる「課題解決型芸術祭」を目的に行われ、2017年の第二回アート×ミックスでは総合ディレクターを置かず、予算規模も縮小する中、教育・地域・農商工・観光などの様々な分野との融合を図りながら周辺自治体や市民の力を得ながら「地域発」の芸術祭を行なって来られたと理解しています。そして、今回、北川フラム氏を再度総合ディレクターに迎い入れ3回目のアートミックスを行いますが、北川フラム氏を置く事での効果や期待する事と第2回目との違いについてお伺いします。
スポーツ国際交流部 参事 初めに、北川フラム氏を総合ディレクターに置くことでの効果や期待することでございますが、北川フラム氏は、グローバルな視点で市原の良さを定義し、国内外から著名な芸術家の招聘が期待できる、地域密着型芸術祭の第一人者として実績を持つ、トップレベルのアートディレクターであります。
同氏の起用により、著名な芸術家による話題性のある作品が展示されることで、現代アートファン層の中で大きな割合を占める、若い女性を中心とした新たな集客が見込まれ、交流人口の増加や市原ファン獲得の効果などが期待されます。
次に、第2回目との違いでございますが、第2回では、市民や子どもたちが参画する機会を大幅に拡充し、地域住民が活躍する、いわば市民参加型の芸術祭として開催したことで、地域団体による連携事業の拡充や、おもてなし機運の醸成などの成果があったものの、専門的な知見を要するアートディレクションに課題がございました。
いちはらアート×ミックス2020では、第2回目の成果である、地域でのおもてなし機運の醸成や市民力の向上を追い風として捉え、そこに北川フラム総合ディレクターの起用による、最先端の現代アートを融合させることで、より深化した芸術祭を目指してまいります。
(2)成功に向けてのPR方法について
①「継続はチカラなり」と言う言葉がありますが、闇雲に続けるのではなく南市原を発展させる為にも、市長の二期目の目標でもある「ひとの活躍推進と愛着・誇りの創生」で謳われている「人の力」を引き出し、困難な課題を乗り越え、未来を切り拓くためにも、「いちはらファン」を増やすためにも、今回の3回目を成功させる事が大変重要であると考えます。
その為には、芸術家や作品・ボランティアそして行政・町会や地域住民また学校間の連携など芸術祭を構成するハードの部分が大切なのは勿論ですが、ソフトな部分とも言える来場者数や経済効果という数字が、成功したかどの一つの指標になるのではと思います。
実際に来場者数で見ても、回を重ねる事で数はプラスになり、経済効果も1回目、2回目を合わせ約16億円と試算されていますし、地域の方々の意識や関わり方も向上しているものと感じています。
そこで伺いますが、前回よりも成功させる事は勿論ですが、市原市にアート×ミックス有りと言われる様な芸術祭にする為に、今回の芸術祭ではどの様なPRの手法を用いて、多くの方にお越しいただくのか、また、興味を持っていただくのか、お伺いします。
スポーツ国際交流部 参事 過去2回の芸術祭につきましては、プロモーション活動が十分に機能していなかったとの反省を踏まえ、第3回では、効果的なプロモーション活動を展開してまいりたいと考えております。
現在までの主な取り組みといたしましては、今回の芸術祭のメインターゲットである、首都圏や全国の30代の働く女性に対して、周知に効果が高い媒体とされる、インスタグラムを中心としたSNSを活用し、職員により南市原周辺の里山風景などをほぼ毎日情報発信し、周知及び誘客に向けた広報活動を行っております。
また、本事業は、市のシティプロモーション戦略の重点事業と位置づけておりますので、関係部や広報アドバイザーとも協議、連携しながら、テレビ・雑誌など、各種メディアとリレーションの強化を図り、アーティストやイベントの情報など定期的な話題作りを仕掛けてまいります。
さらに、インバウンドの獲得に向け、海外の旅行代理店への働きかけや、ホームページ・啓発印刷物の多言語化対応などについても、専門家の知見を得つつ、効果的な宣伝活動を展開してまいります。
②只今の御答弁で、インスタグラムやフェイスブックなどのSNSを活用し、県外の30代女性をターゲットにするということですが、若い女性の情報発信力と行動力からの広がりを期待しているのかと感じました。
女性をターゲットにしているのであれば、SNSは勿論ですが、旅行雑誌やファッション雑誌等の媒体にも広告や記事を掲載するメディア・ミックスも効果があるのではと思います。
そして、現在、市原市では動画やSNS等を活用し市内外の多くの方に対し本市の持つ魅力を発信するシティプロモーションに力を入れておりますし、市長自らインスタグラムを駆使してプロモーションをされ、少しずつ市原市の魅力が認知されてきているものと感じています。
そこには、シティプロモーション推進課の皆さんのご努力が大きく関係していると思いますが、市原市広報戦略アドバイザーの力も大きいものと思います。
今回の芸術祭に限った事ではありませんが、イベントや様々な事業を開催するにあたり、ターゲットの当て方や目標達成させる為のPR戦略などの広告やPR活動というのはとても重要であり、今回の芸術祭にしてもPRの仕方によっては、人々が訪れるか否かと、言うよりは興味を持つかどうかにも関わるのでは無いでしょうか。来年は、オリンピック・パラリンピックの年でもあります。市内に限らず日本中でオリンピック・パラリンピック関連の広告やプロモーションが行われると考えられます。
このような時だからこそ、民間のノウハウを活用し、掛けるところには掛けるというような予算の活用が、成功に向けてのアプローチの一つと考えますが、考えをお聞きします。
スポーツ国際交流部 参事 今回の芸術祭においては、ターゲットごとに広報戦略を立て、定期的な話題づくりのもと、各種メディアへのプレスリリースや宣伝営業活動を行い、コミュニケーションを活発化する、いわゆる「メディアリレーションの強化」を掲げております。
この考えに基づき、開催前から閉会までの全体のスケジュールの中で、どのタイミングでどのようなメディアを活用することで高いPR効果を得られるのか、関係部や広報アドバイザーと協議・連携しながら、効果的な予算の活用に努めてまいります。
(3)芸術祭を通してのまちづくりについて
①本市では、交流人口500万人を目標に掲げ各種施策を進められていますが、芸術祭を通してのまちづくりにおいては、近年、注目されているキーワードである「関係人口」を掘り起こし地域との関係を積極的に持ってもらう取り組みが必要と考えます。
初めて訪れ満足される方々、そして、そこからのクチコミや先ほども質問したSNSで広がる効果も勿論のことでありますが、何度も訪れ何らかの形で地域に関わりを持ち地域を応援してくださる方々を増やすという新たな視点を持つことも必要ではないかと思います。
現在の取り組みで、この様な方々は「菜の花プレーヤーズ」であるかと思いますが、この様な市原ファンを増やし、今は、イベントに参加するだけ、芸術が好きなだけで関わりを持っている関係から、いずれは移住したい・してみたいと思える関係づくりが芸術祭を通してのまちづくりであり、関係人口創出という視点が重要であり、地域産業の活性化、南市原のまちづくりに繋がるものと思いますが、考えをお聞かせください。
スポーツ国際交流部 参事 議員ご指摘のとおり、今後のまちづくりにおいて、交流人口と定住人口の間に位置する「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待されております。
また、関係人口は、地域への関与の度合いから、地域のファンとしての関係人口と、地域へ主体的な関わりが期待される、より繋がりの強い関係人口の大きく二つに分けられます。
先ずは、アートミックスを通じて、関係人口の裾野である、定期的な訪問や特産品の購入などをしていただく、地域のファンを拡大させること。そして、地域のファンの中から、菜の花プレーヤーズのような地域のことを一緒に考えて行動していただく、より関わりの強い関係人口として、地域づくりの担い手につなげることが重要であると考えております。
実際、瀬戸内国際芸術祭の舞台になっている男木島では、芸術祭を機に、新たに移住する人が増え、一旦廃校となった小学校、中学校を再建し、復活させたという事例もございます。
こうした先例に見られるよう、アートを活用した文化芸術活動には、地域との新たな関わりをもたらす、多様な人材が地域づくりに参画することが期待されます。
これらのことから、関係人口がもたらす地域産業の活性化、その波及効果をまちづくりに繋げることも視野に入れて事業に取り組んでまいります。
(2)「里山」という言葉は、日本人の心に響き、海外の方々にも浸透している言葉であると思います、今後のインバウンド需要や旅行型の美術展を進めて行く上でも、一過性で終わるのではなく継続的に訪れる方々を掘り起こす為や芸術祭開催時以外で訪れる方々のためにも、芸術家さんたちの残せる作品は残し、市原市の魅力・里山の魅力としながら新たな観光需要の掘り起こしに繋げ、新たなまちづくりの一コマにする事も必要であると思います。
また、作品制作に関わった方々の作品に対する誇りや想いを次の世代に繋げる事も地域を愛するファンを増やす事に繋がるのでは無いかと思いますが、考えをお聞きします。
芸術祭の作品をレガシーとして残していくことは、その作品のテーマやコンセプト、作家や作品制作に関わった方々の想いを将来へ繋げるということ、地域の新たな観光資源としても期待できることから、芸術祭の効果を一過性の物で終わらせないための有意義な手法だと認識しております。
しかしながら、作品を残し維持管理していくためには、保全管理の労力や費用等の課題もありますので、先進市での事例を参考に調査研究してまいります。
スポーツ国際交流部 参事 芸術祭の作品をレガシーとして残していくことは、その作品のテーマやコンセプト、作家や作品制作に関わった方々の想いを将来へ繋げるということ、地域の新たな観光資源としても期待できることから、芸術祭の効果を一過性の物で終わらせないための有意義な手法だと認識しております。
しかしながら、作品を残し維持管理していくためには、保全管理の労力や費用等の課題もありますので、先進市での事例を参考に調査研究してまいります。
(4) アートミックスの今後について
①現在、公共資産マネジメントの中に位置付けられている旧里見小学校ですが、第1回目から中心的な場所でありメイン会場としても利用されている施設であります。しかし、現状では耐震化の関係上、体育館や屋外運動場・一部の教室のみ使用可能となっています。
今後、第4回・5回・6回と継続して行くかどうかという議論や会場を全市的に広げることは別としても、この施設はアートミックスのシンボル的会場であり地域の方々の思い入れのある場所であると思います。
また、関係人口のますますの増加を推し進める上でも重要な施設ではないでしょうか。
以前お伺いした話ですと、教育施設としての利用ではなく、その他での施設利用とでは耐震基準も違い工事に関する費用でも相当な違いがあると聞きました、実際に昨日の答弁でも耐震化には3000万円という数字が出ましたが、耐震化改修を図りアート×ミックスとしての利用だけではなく、里山団体の拠点や今後ますますの需要が考えられる観光施設などとしての利活用を検討してはと考えますが、考えをお聞かせください。
スポーツ国際交流部 参事 旧里見小学校は第1回、第2回のアート×ミックスでも、メイン会場として利用しており、アート×ミックスを代表する施設であり、多くのアート×ミックス関係者に親しみの深い施設となっております。
しかしながら、管理教室棟におきましては、耐震性能が不足しているため、第2回アート×ミックス後の継続イベントである、アート春、アート秋での使用はしておりません。
このようなことから、今後の活用につきましては、関係部署と協議検討してまいります。
(2)三年後の開催に向けての基本的な考えは、今回のアート×ミックスの成功をもって次回4回目を開催するか否かを検討するとのことですが、市長あいさつで掲げられた「市原の未来創生に向けた7つの基本政策」の一つである「ひとの活躍推進と愛着・誇りの創生」でもアート×ミックス事業は位置付けられ、「本市ならではのレガシーを創出し、次世代へ継承します」とあり、今あるものを次世代へつなげることは勿論ですが、時代に合わせた新たなレガシーをつなげていくこと、すなわちアート×ミックス事業をつなげていくことが、市原の未来創生には必要であると考えます。
また、現場職員・地域の方々・アーティストの方々にとっても、次があるかどうかの中での活動より、きちっとした中での活動の場がモチベーションにもつながるのではと思いますが、市の考えをお聞かせください。
小出市長 今回のアート×ミックスは、過去2回の開催を通して得た様々な経験を踏まえて開催するものであり、将来に向けて大変重要な意味を持つものであると認識をしております。
このため、実行委員会の構成団体をはじめとする関係者の皆さまが「房総里山芸術祭いちはらアート×ミックス2020」に込めた思いを共有し、人の力を結集させ、成功に導くことが次へつながることになるものと考えております。