令和2年第4回定例会で個別質問いたしました

1 南いちはらのまちづくりについて
(1)アートを活用したまちづくりについて
芸術祭を開催するだけではなく、アート×ミックスに関わった芸術家には、芸術祭後にまちづくりの

一員として本市と関わり続けてもらうことが良いと思うが、市の見解を伺います。
スポーツ国際交流部参事 「いちはらアート×ミックス」は、「土地の伝統や歴史、人々の暮らしや記憶などをアートの力で顕在化し、また媒介として、多様な人々が交流・交感(ミックス)することにより、継続的な地域活性化の礎を築くこと」を目的に実施してまいりました。
第1回は、地域の課題をアートの力により解決するという課題解決型芸術祭としてスタートし、続く第2回では、その趣旨に共感し、発起していただいた地域の方々の活躍により、アートを活用した新たなまちづくりの礎を作っていただきました。
そして、第3回目となる今回は、市民とアーティストとの作品の共創活動を通じ、社会関係資本の更なる拡がりへと導き、コミュニティの活性化や地域活動の自律化をもたらす新たなまちづくりのモデルを構築するという、より大きな目的のもと、継続性を意識した取り組みを展開してまいります。
地域とアーティストが関わり続けることで成果を得るための具体的な取り組みの一つとして、第1回のアート×ミックスで月崎駅前に制作された「森ラジオステーション」をベースとした展開を考えております。
森ラジオステーションは、当初、期間限定の作品として、会期終了後に撤去される予定でありましたが、地域の歴史や記憶の象徴として、地元住民の方々が自分たちの力で残していこうと決意され、アーティストや菜の花プレーヤーズなどのボランティアの方々との絆のもと、現在まで大切に維持管理され続けているものであります。
また、作品の名前についても、地域の活動とともに作品をつくってきたという、アーティストの想いから、作品名を「森ラジオステーション×森遊会」と地域団体の名前を加えるまでに至りました。
こうしたアート×ミックスを通じて制作された作品に、多くの人の手が加わることで、生き続ける作品として、未来へ継承し、地域の誇りとしていくというコンセプトのもと、その活動のアーカイブ化を図る支援をしてまいりたいと考えております。
こうした取り組みを通じ、「ひと」と「地域」が主体となって、未来を切り拓く、本市のめざす新たなまちづくりにつなげてまいります。

アートとまちづくりを結びつけることで地域の活性化や賑わいを生み出し、地域の特徴を生かした個性豊かな「まち」をつくることが南いちはらには必要と考えるが、どのような形でまちづくりにアーティストを取り込んでいくのか、市の見解を伺いたい。
スポーツ国際交流部参事 アーティストをどのような形でまちづくりに取り込んでいくかについてお答えいたします。
ただいま議員からご紹介いただきましたアーティスト・イン・レジデンスは、「アーティストが一定期間ある土地に滞在し、普段とは異なる文化環境で作品制作やリサーチ活動を行うこと。またはアーティストの滞在制作を支援する事業」であります。
また、本事業は、様々な相乗効果をもたらすものであり、スタジオの公開やワークショップの開催といったプログラムを通じ、日ごろ芸術に触れることのない住民、特に子供たちと、異なる文化を持つ国や地域のアーティストとの交流機会が豊富に提供されること、デザインや意匠など、まちなみの変化が地域のブランドイメージ向上につながること、ひいては交流人口、関係人口、移住・定住への波及などが期待されます。
アーティスト・イン・レジデンスをまちづくりに生かした先進的な取り組みは、先般、横浜市にて開催されておりました横浜トリエンナーレの関連プログラム、初黄(はつこ)・日ノ出町地区の黄金町バザールがございます。
この取り組みは、違法な特殊飲食店の立地による生活環境の悪化という地域の深刻な課題に対応するため、住民自らが立ち上がり、環境浄化策として、地域、行政、警察、企業、大学、美術関係者の協働により、2008年から現在まで、通年プログラムとして、継続実施されております。
その特徴は、まちと一体化した環境で、滞在や制作、発表できることにあり、元違法飲食店を用途変更して再生させた施設や、鉄道高架下の文化芸術スタジオなど、拠点がまちに点在し、同時に多数のアーティストが活動できることにあります。
この取り組みをヒントに、まずは今回のアート×ミックスの会場地であり、加えて、2030年を見据えた商店街や駅周辺の将来像に基づくアクションプランを定め、関係者との協力のもと、活発に活動されている牛久地区商店街において、アートによるコミュニティの課題解決や、新たな価値の創造をめざす「コミュニティ・アートを通じたまちづくり」の実践と効果検証を測るモデル事業として展開できないか、現在検討しているところでございます。

まちづくりに関わる芸術家については、学生の若い感性も必要と考えるが、学生の活動の場としての大学等との連携、また、包括連携協定を結ぶ市原高校との協力について、市の見解を伺いたい。
スポーツ国際交流部参事 ご紹介のありました取手市では、市民と行政、東京芸術大学3者の共同体制により、芸術による文化都市を目指す取手のまちをフィールドとして、アーティストの活動支援と、市民の芸術体験・創造活動の仕組みづくりにより、芸術表現を通じた新しい価値観の創造を目指して活動している、取手アートプロジェクトが有名であります。
中でも、芸術と社会をつなぐ役割であるアートマネージャーを養成するための大学主催による教育講座・TAP塾では、その講座で育成された市民が、芸術文化を通じたまちづくりの主体的な担い手として、継続して活躍されているという全国でも有数な好事例として、本市においても大いに参考にすべきものと考えております。
大学との連携は、大学の持つ専門的な知見や学生の柔軟な発想がまちづくりに活かされることが期待されるとともに、大学としても学生の具体的なフィールドワークの実践が行えることから、双方にとってメリットがあるものと考えられます。
現在、市において「コミュニティ・アートを通じたまちづくり」のモデル事業として、実施を検討している牛久地区では、千葉大学において、商店街のポータルサイトやまち歩きマップの制作、のれんプロジェクトなどの実践的な活動をされておりますので、多方面での連携が期待できるものであります。
また、包括連携協定を結んでいる市原高校につきましては、アート×ミックスにおいても、おもてなし交流プログラムでの作品制作や企画発表会での吹奏楽部の演奏、旧白鳥小学校の花壇整備などの具体的な取り組みを進めていただいております。
こうした連携を通じ、地域における社会関係資本を更なる拡がりへと導き、コミュニティの活性化や地域活動の自律化をもたらす新たなまちづくりのモデルを構築してまいります。

アーティストと地域の人々との協働が郷土愛に繋がり、地域の一人ひとりがアクションを起こし、都市に対する市民の誇りである「シビックプライド」の醸成が今後のまちづくりの重要な要素となると考えるが、「シビックプライド」をどのようにまちづくりに反映させるのか、市の見解を伺いたい。
シビックプライドは、「都市に対する市民の誇り」であり、都市デザインの視点から、人と人との関係を捉えようとする考え方であります。
また、シビックプライドの考え方においては、まちと人との接点である「コミュニケーションポイント」を磨き上げ、魅力を高めることを繰り返すことで、ひいては「シビックプライド」が醸成されていくものと定義しております。
これをアート×ミックスになぞらえると、アーティストが見出す、その地域の伝統や歴史、人々の暮らしなどを基に着想を得、市民との共創活動の中で作りあげられる作品は、まさにコミュニケーションポイントにあたるものであり、内田地区や月崎地区、月出地区などにおいては、それぞれの作品が接点となり、地域の誇りや社会関係資本の充実がもたらされているものと考えております。
さらに、現在検討しておりますアーティスト・イン・レジデンスと牛久駅周辺商業活性化事業との連携は、商店街全体がコミュニケーションポイントとなって、広く地域住民のシビックプライドをもたらし、まちの活性化や交流人口の増加、関係人口の創出につながっていくことが期待できるものと考えております。
議員ご指摘のとおり、アーティストが関わることで課題が解決される訳ではなく、何より大事なのは、やはりそこに住んでいる人の「地域をより良くしたい」「これからもずっと住み続けたい」という想いであると考えます。
そうした想いから生まれる具体的な行動が、シビックプライドにつながるよう、アートを活用した様々な取り組みを行い、魅力を備えた持続可能なまちづくりの好循環へとつなげてまいります。

(2)移住定住の促進について
(仮称)市原市SDGs戦略骨子案で示された南いちはらへの取組となる「里山・アートを活用した地域の持続的発展の実現」として、市長の思い描く南いちはらの姿について伺いたい。
小出市長 私は、まちづくりを思い描く上で、「地域の強み」を最大限に生かすことが、非常に重要であると考えております。
南いちはらは、成田・羽田の両国際空港の中間に位置し、都心から1時間ほどでアクセスできる地理的優位性に加え、里山、アート、ゴルフ場、チバニアンの地層といった魅力溢れる資源に恵まれております。
また、牛久未来会議や地域おこし協力隊、里山団体などに加え、市外の事業者等にも参加いただき、地域に愛着をもった多くの方々が活動をしております。
私は、これらを「地域の強み」として最大限に生かす施策等を総合計画、総合戦略に位置付け、地域の活性化や里山・アートを活用した新たな魅力の創出などに積極的に取り組み、交流人口及び関係人口の拡大、そして、移住へとつなげているところであります。
さらに、加茂学園における特色ある学校づくりを進めることで、豊かな自然環境の中で、子育てをしたい世帯に、移住先として選択していただけるよう魅力の向上を図っております。
私は、思い描く南いちはらの姿の実現に向け、現在、策定中の「(仮称)市原市SDGs戦略」において、リーディングプロジェクトとして「里山・アートを活用した地域の持続的発展の実現」を位置付け、南いちはらの強みを生かしたまちづくりを公民連携により、取り組んでまいります。

里山ワークの推進ということで、首都圏の企業をターゲットに里山の魅力を効果的に発信し、移住・オフィス誘致を図ると掲げているが、具体的にどのような取り組みをされるのか、市の見解を伺いたい。
都市戦略部長 はじめに、里山ワーク推進事業につきましては、市南部地域において、地元団体や地域おこし協力隊による空き家利活用などの取組と連動し、新型コロナウイルス感染拡大に伴う地方回帰の動きを捉え、本市が移住やオフィス立地の受け皿となることで、定住・交流人口の増加や地域経済の活性化を図るものであります。
具体的には、国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用し、オフィス設置に必要な改修費や備品調達費などの費用の一部を補助しようとするもので、本議会において可決いただきました。
これは、令和2年3月に観光庁の観光地域づくり候補法人として登録された市原DMOにおいて、移住促進の取組を強化するために、移住希望者や企業をワンストップで支援する「いちはらライフ&ワークコミッション」が設立されたことを受けて取り組むものです。
コミッションでは、地元団体や地域の事業者と連携しながら、オフィスの立地を検討している企業へのプロモーション、ワンストップ相談など、企業のニーズに対応した誘致活動を展開していくこととしており、例えば、プロモーションの面では、DMOや関連事業者のネットワークを活用し、主に首都圏の中小企業やベンチャー企業に向けて、専用ウェブサイトやSNS等を通じた地域情報や動画の配信などを行い、市南部地域の魅力を発信することとしております。
また、ワンストップ支援の面では、オフィス立地可能な土地・施設に関する情報の提供、社員研修やレクリエーションに活用可能な市内スポットの紹介など、オフィス立地の際の不安解消に役立つ相談支援を、インターネット、又は養老渓谷駅近くに設置予定の空き家をリノベーションした相談窓口の両面から実施することとしており、都市戦略部といたしましても、この動きにしっかりと伴走し、市原ならではの市南部地域へのオフィス誘致に取り組んでまいります。

本市の移住・定住に関する考え方として、支援金などのインセンティブを与えるものではなく、人と人のつながりを大切にした支援を考えているとのことであるが、どのようなものなのか。また、インセンティブを与えることも検討してみてはと考えるが、市の見解を伺いたい。
都市戦略部長 市南部地域への移住・定住の促進に当たりましては、関係各部、また地元の皆様と連携しながら取り組んでいくことが重要ですが、都心から1時間圏内に位置する本市の立地特性に加え、ゴルフの街いちはら、アート・里山を活用した地域活性化など、これまでの取組によって築いてきた強みを踏まえれば、たとえば、ゴルフ愛好家、デザイナーなどのクリエイティブ人材や芸術関係者等が主なターゲットとして考えられるところです。
こうした人材が地域に求めるニーズとして、仕事や活動をしやすい環境づくりや、活動の発信拠点、地域コミュニティへの参画などがあるものと考えております。
そこで、「いちはらライフ&ワークコミッション」を通じた空き家等の情報提供、地域人材とのマッチングやコミュニティへの参画支援などに加え、いちはらアート×ミックスなどの機会を活用した情報発信支援に取り組んでまいります。